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2009、02、02
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「グス・・・」


あれは・・・・・・






どうしよう好きみたい







いつもの帰り道。

今日の運勢はまぁ上々。
金運は二重丸で、恋愛運も二重丸。
100円玉拾ったけど、街角で見かけた可愛い女の子には逃げられたから、まあプラマイゼロってところかな。


いつものように公園を近道として通れば、夕焼けの中、一人ブランコに座っている女の子が見えた。
元気いっぱい漕いでいるわけではない、ただポツンとそこに座っていた。



「グス・・・」


あれは・・・、同じクラスの清水さんだ。
清水七尾ちゃん。女子は全員ちゃんと覚えてるよ。

清水さんは、目立つ子じゃあないけど、目鼻立ちもスッキリしていて可愛い。
俺的にはすっごくタイプの女の子なんだけどなあ。
でも、あまり喋った事ないんだよね。


その子が、泣いている。
誰もいない公園で、一人。


声をかけるべきか、そのままスルーするか。


決まってるよ。
女の子が一人で泣いてるんだよ?
これは声かけなきゃ。


俺は静かに清水さんに近づく。
夕日によって長く伸びた影が、一層この公園の寂しさを助長していた。



「清水さん」
「あ・・・えと・・・千石くん・・・」


声をかけると、ゆっくりと顔をあげる清水さん。
目を赤く腫らして、明らかに泣いてました。っていう顔だ。


「どうしたの?そんなところで泣いて。・・・俺でよければ話聞くよ?」


隣のブランコに、どっか。と腰を下ろす。
一瞬のポカンとした彼女の顔。
それから、俺のその言葉に、言おうか言わまいか迷った風な感じだった。

まあ、そうだよねえ。
普段喋ったこともない人に、泣いてる訳を話すのもねえ・・・。


話しかけておいてなんだが、自分でもちょっと余計なお世話だったかな。という気がしないでもない。
しかし、声をかけてしまった以上しょうがない。
清水さんの返答を待つ。


「・・・千石くんこそ」
「ん?」
「千石くんこそ、どうしたの?何で・・・私に声かけたの?」


逆に質問されてしまった。
清水さんの目線と、俺の目線が交差する。


「何で、って・・・・・・君が、泣いてたから?」


だって、これ本当だもの。君が泣いてたから。これしか理由が見つからない。
それこそヒーローみたいなセリフしか出てこなくて。


「ふふ・・・千石くんて、変な人」


笑われてしまった。



「だって女の子が泣いてるのに、放っておけないでしょ?」
「千石くんは、いつもそうやって女の子を口説いてるの?」


また質問。
クスクスと笑う清水さん。
目にはまだうっすらと涙が光っているものの、少し元気になったように見える。


「千石くんて、優しいんだね」
「いやぁ、それほどでも」
「私、彼じゃなくて千石を好きになればよかった」


へ?


・・・彼?清水さんって彼氏持ち?
え、何なに?俺ってばデートに誘う前から失敗してんの?

(お、俺ってばアンラッキー・・・)


「へ、へえー・・・彼氏いるんだー・・・ (じゃあ俺ってばとんだ当て馬じゃーん・・・)」
「ううん・・・」

先程とは打って変わって、搾り出すような小さな言葉が、ポツリと彼女の口から漏れた。


「・・・さっき告白したんだけどね・・・ふられちゃった」


清水さんは悲しそうに微笑んだ。目線はつま先の方へ。
キィ。とブランコもまた悲しげに揺れる。



(そうか・・・だから・・・泣いてたんだ・・・)


「ごめん・・・なんか・・・」
「ううん。千石くんが気にすることないの」

慰めるつもりが、いつの間にか慰められていた。
俺ってば情けない・・・。


「・・・それにしても」
「?」
「こんな優しい清水さんをふるような男は、どこの誰なんだい?見る目がないなあ!!」


何とか元気を出して貰いたくて。
そう言ったら、ちょっとビックリしたような顔をして、また清水さんはクスクスと笑い出した。
そうだよ。そうやって笑ってた方がずっといいよ。


「俺だったら、もっと君を幸せにしてみせる。・・・どう?清水さん。俺ってば今彼女募集中だよ?」
「ふふふ・・・やっぱり千石くんて・・・変な人。・・・・・・ありがと・・・千石くん」


(あ・・・)



ドキ。



そう言って笑った清水さんの顔は、夕日の中で飛び切り輝いて見えて、


(え?何・・・!?これ、凄い、ドキドキするんだけど・・・!!ちょっと待って!これって・・・これって・・・)


心臓が早鐘みたいにバクバクいって、絶対今顔赤い。
指摘されたら全部夕日のせいってことにしよう。
だって、今は公園も、清水さんも、全部全部オレンジ色。


「ありがとう千石くん。元気出た」
「え?っあ、うん。どういたしまして・・・」


清水さんはブランコから立ち上がり、うーん。と背伸びした。
心なしか、少し晴れ晴れした顔。


「私、帰るね。本当にありがとう、千石くん。今度、お礼させてね」
「や・・・えーと。・・・じゃあ、今度デートしない?」
「あはは。上手いなあ千石くんは。・・・じゃあ、また明日、学校でね千石くん」
「あ・・・き、気をつけて・・・」


そう言って、清水さんは自分のバッグを手にとり、軽く手を振って小走りで帰って行った。
俺は、それをただ見つめることしかできなくて。
後に残されたのは、彼女が座っていたブランコと、俺。


『ありがとう千石くん』


彼女の笑顔がフラッシュバック。
目の前でチカチカと瞬いて、俺はたまらず目を白黒させてしまう。
なんでこんなにドキドキするんだ・・・。やっぱり・・・これって・・・


「どうしよう・・・俺、清水さんのこと・・・。好きみたい・・・」



だって、こんな、こんなタイミングで・・・。彼女振られたばっかりだしさー・・・!!!
それに今、デート思いっきりスルーされたし・・・!!!


でも・・・。また、明日、学校で・・・・・・。

学校で・・・会ったら。


明日からは、笑顔で話しかけてくれるんだろうか・・・。


・・・・・・・・・。


(・・・俺こんなに明日が待ち遠しかったことなんて、ないよ・・・)




【終】





つい、そのままの勢いで書き上げてしまった・・・・・・。
千石ってよくわからない・・・・・・。こんな感じなの?どうなの??
ただのチャラ男みたいになった気配なんだけどwwwwwww
やっぱり千石はよくわかりません。うーむ。
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(弦一郎落ちを想定。あ、でもこの内容は柳でもイケそう)



伊織と2人でお買い物。お互い彼氏がいるけれど、やっぱり買い物は女友達同士にかぎる。
なんていっても気を使わないし、女同士の会話が出来る。

喫茶店でお茶をしているとき、ふと伊織が黙った。

(…どうしたんだろ)




左手の




「ねえ、透」
「ん?何?」

黙っていた伊織が、ふと口を開いた。
まだ何かいぶかしむような顔をしている。どうしたというのだろう。

「何?どうしたのさ。何かあるなら言ってよ。気になるじゃん」
「いやさぁ・・・。透って、指輪してないよなぁ・・・って思って」

伊織はフォークでチーズタルトをつつきながら私の手をしげしげと眺める。
つられて私も両の手を前にかざし、自分でもしげしげと眺めて見た。


「うん。してないね。部活とかあるし、邪魔じゃん。マニキュアも塗ってないよ」
「いや、私もマニキュアは塗ってないけどさ。すぐ剥げるし。・・・ってそうじゃなくて!」

伊織は左手を指差して言う。

「指輪の話!・・・透は弦一郎から指輪とか貰ってないの?」


伊織の左手の薬指には可愛らしいシンプルな指輪がキラキラと輝いていた。
要するに、彼氏がいることの証。
伊織も部活のときはつけてないけれど、こうして出かけるときなんかはよくつけている。


「貰って・・・ないねえ」
「あ、やっぱりそうなんだ?」
「うん。まあ、ちょっとは欲しいかな・・・とか思ったりするけどね」

そう言って冷めかけの紅茶をすする。
言われてみれば、そうだな。最近はけっこう恋人同士でお揃いの指輪してたりとかするもんね。

彼氏彼女の証。っていうのか。
まあそういうのに憧れないわけでもない。・・・でも・・・・・・

「・・・弦一郎だし」
「ん、まあ・・・弦一郎だしね・・・」
「弦一郎はそういうのは、本当にここぞ。という時しかくれないと思うなあ・・・」
「プロポーズのときとか?」
「ちょ!気が早いよ!」

飲んでた紅茶を噴出しそうになった。
プ、プロポーズとか・・・!!有り得ない話じゃあないけど・・・け、結婚はまだ考えたことないぞ・・・?

「だって、ここぞ。ってもうプロポーズくらいしかないじゃん」
「まあ、そうなんだけどさ・・・」

それを考えると、指輪をはめた左手を見られるのはかなり後ということになる。


「まあ、でも分かる気がするよ。弦一郎ってそういう感じだよね」
「うん。物で縛ることをしないっていうか・・・。アピールしないっていうか・・・」
「束縛しないよね」
「うん。・・・でもそれはそれで・・・」
「ちょっと寂しいんでしょ」
「うん・・・。ちょっと、ね」






「・・・って話を伊織としたのね」
「・・・その話を俺に言うのか?」

眉間に皺を寄せた弦一郎が言葉を返す。
だって、なんか言いたかったんだもの。

「要するに、お前は指輪が欲しいということか?」
「・・・うーん・・・そういうわけじゃないんだけど・・・なんていうのかな・・・」


うん。指輪が欲しいってわけじゃないんだ。
ただ、何ていうの?近況報告?
指輪をくれるとかそういう選択肢は弦一郎くんの脳内にあるのかなー。っていう、そういう確認?


「ほら、指輪って・・・なんか『特別』って感じがするじゃない」
「ふむ、そうか・・・」


そう言ったまま弦一郎は黙ってしまった。
困らせるような事言ってすまない弦一郎よ・・・。

でも、私も一応『乙女』ってことで(そこ年増とか言わない)、そういうのに興味あるっていうか、やっぱり憧れるってもので。
はからずも、伊織の指に輝く物に「いいなぁ」って思っちゃったんだよね。

弦一郎が熟考モードに入ってしまったので、私はおもむろに机の上にあった和菓子の包みに手を伸ばす。
一つ一つ、細いリボンがついている可愛らしい包みだ。
スルリとそのリボンを引けば、中からは美味しそうな栗入りのお菓子が顔を覗かせる。

そしてふと、弦一郎は何を思ったのか、急にそのリボンを手にとった。

「透」
「ん?」
「左手の甲を出してみろ」
「え?何で?」
「いいから」

言われるがままに、左手を差し出す。
すると弦一郎は、私の薬指にそのリボンを巻きつけて、キュっと結んだ。

「指輪の代わり、にしては少しばかり味気ないが・・・」

半分バツが悪そうな顔をした弦一郎が言葉を濁した。



「・・・・・・・・・」
「・・・透?」


私が左手を見つめたまま無言なので、不安と疑問が交じり合った視線を送られる。



うん、だって・・・お菓子の包みのリボンだし。


即席の、思いつきだし。


でも・・・


だけど、だけどね。

何でかな。
すっごーく、嬉しかったの。
何でか感動しちゃって、言葉が出なかったんだ。


「なに、これ」
「・・・すまん」
「なにこれ・・・。ふふ・・・ふふふ・・・あははは・・・ふふふ・・・」
「・・・そ、そんなに笑うことなかろう!?」

思わず笑い声を出したら、照れたような少し拗ねたような弦一郎の声が聞こえた。

「ふふ・・・だって、だって・・・何か嬉しくて・・・」

私のその言葉に、少し面食らったような弦一郎の顔。
だって、本当に嬉しかったんだよ?


「可愛い・・・。ありがとう弦一郎」

自然と頬が緩む。
なんか、胸がジーンってなった。
ただのリボンなのにね。


「・・・外すのもったいないなー・・・」

左手をずっと眺めていたら、逆に弦一郎に苦笑いされた。


「これ、このまま固めておけないかなあ?」
「・・・安上がりだな、透は・・・」
「む。それは聞き捨てなりませんね」


たしかにそうかも。私って安上がりな女だなあ。
こんなことで嬉しくなってしまうんだもの。
ずっとずっとつけていたいなあ・・・。

「透、その・・・本物の指輪は・・・」
「いいよ。謝らないで?・・・これで十分嬉しいから」
「そ、そうか?」
「うん!凄く嬉しい。大切にするね!ふふ・・・帰ったら伊織に自慢しようっと」


そう言って笑うと、やっぱり困ったような微妙な顔で返された。





後日。
私の左手には、リボンじゃなくて、正真正銘、本物の指輪がはまることになりました。




【終】


\(^0^)/
なんか、ちょっと若い感じで書けて満足wwwwwww
これ蓮二でも絶対可愛いと思うんだよね。しかしあえての弦一郎。
弦一郎は、普通にまだまだこれからが恋人同士本番だよ。みたいなほのぼの付き合いだよなあ。
ゆっくりゆっくりお付き合いが進むイメージです。
書いてて、なんか「可愛いなこいつら・・・ちくしょう!!可愛い!!応援したい!」ってなった(笑)

透は、最近になって一層綺麗になったと思う。
明るくて、少し負けず嫌いで、そして優しい俺の幼馴染み。

そんな彼女を、俺はずっとただの幼馴染みとしてしか見ていなかった。
そう、出会ってから15年以上。一度足りともそれ以上、それ以下の感情なんて持ち合わせたことなんてなかった。

だから、透と蓮二が付き合うことになったと知ったとき、こんなに胸が張り裂けるような思いになるのは筋違いだ。
俺は間違っている。
俺は… 俺は…。





理不尽な思い 不器用な恋






その日は、夏祭りだった。
必ず透と来ていた夏祭り。
出会ってから、そうずっと。
部活で行けない時もあった。部内のみんなで行くこともあった。
でも行く時は、決まって透が隣りにいた。

一人で来た縁日。
薄暗い空間の中、出店の光がチカチカと幻想的に光る。
今の俺には眩しいくらいで、何故俺はここに一人なんだろうと、本当にそう思った。

この場所に来たのは、べっ甲飴が久しぶりに食べたい。などと言う母親の頼みで、本来ならこんな場所は一人で行くような場所ではない。


目的なく歩いた今までとは違い、目的は飴のみ。という味気無い夏祭り。
縁日にわくわくする。なんていう年は、とうの昔に過ぎてしまった。

俺は屋台の店主から飴を受け取って、早々に元来た道を引き返す。
左手にはべっ甲飴が2本。

母の分と…透の分だ。
何故だろう。ここには蓮二と一緒に来ているはずなのだから、べっ甲飴くらい恋人である蓮二が買ってあげているはずである。


『弦一郎、ありがとう』


握り締めているべっ甲飴が、何だか酷く重く感じた。
飴を買うのは、ずっと俺の役目で。
透の好きな飴の形も、好きな色も、全部全部知っている。
思わず透が好きそうな飴を買っている自分に嫌気がさす。

(なんて…俺は女々しいのだ…)



家までの帰り道、人ごみの中につい透の姿を探してしまう。
でもきっと、見つけてしまえば、その隣りには俺ではなく蓮二が笑っている。

だから見つけたくなかった。
でも何故こういうときにばかり見つけてしまうのだろう。

浴衣姿の透の隣り、手を引く蓮二の姿までもハッキリと見つけてしまった。


一寸遠い距離。
あちらはまだ俺には気付いていない。


透と蓮二の手はしっかりと繋がれ、まるで2匹の金魚が寄り添い合うよう。
透の白い浴衣が、夕闇の中でぼんやり光り、さながら俺に見せつけるように他とは際立って見えた。

そして俺は、すっかり立ち尽くしてしまった。
透の手に、まさしく俺の手にある飴と同じものが握られているのを見つけてしまった。


「………」


ありとあらゆる混沌とした感情が俺の中で渦を撒いていた。
しかし事実を受け入れている自分が、確かに存在していた。

いや、感情はむしろ殆ど「無」に近かった。
何も考えられなかった。

ただ、会いたくない。と思った。
俺は何もしていないのに、さながら脱獄犯のように、見つかったら終りのように思えていた。

逃げろ。と、的確ではないが的を得ている警報が頭の中でガンガン鳴った。


俺はそっと踵を返して、遠回りする。
別に会ったところで、旧知の中だし、あの2人の関係は周知の事実。
やましいことは何もないのに。


今までの縁日の思い出は、全て今日の出来事で上書きされてしまった。

祭り屋台に来る度に、きっと今日のことを思い出すんだろう。
このぽっかりと空いた気持ちに、隙間風が駆け抜ける。

全ての色が褪せてゆくようだった。
こんな思い、俺は知らない…。



ただ右手の飴が重かった。



【終】



(その思いの名は、きっと絶望)

===================

以下いろいろ思ったこと長々と。



密やかな告白





好きだ。好きだ。好きだ。

俺は、お前が好きだ。


初めて会ったときから、俺は知らず知らずのうちにお前に惹かれていた。

ずっと気が付かなかった。
いや、気付かないように自らに蓋をしていた。

俺は深く、深く、お前を愛してしまった。
自分でも気付かないくらいに、深く、深く。
それが必然のように、心の中に収まってしまっていた。


好きなんだ。

愛している。


だからこそ。
言えない。


ああ、その言葉が言えたなら。

透、好きだ。
どうしようもなく、ただ愛している…。


お前の全てが愛しいと、そう思ったその時にはお前は遠いところにいて、
どうしても欲しい。なんて、そんな身勝手な思いは許されるはずがない。


この思いを押し殺そう。
それが1番最良の方法なんだ。


だからそんな笑顔を向けないでくれ。
そんな声で俺を呼ばないでくれ。


嘘だ。

俺をもっと求めてくれ。俺の名前を呼んでくれ。
蓮二を忘れて、俺だけのものになってくれ。
俺だけをその瞳に映してくれ。


そんなことは叶わない。
叶わないと理解している。
何度お前を夢に見たのかさえも分からない。

ただお前をひたすらに愛している。
愛してるんだ。


お前の友であろう。
ずっと、ずっと。
俺は俺自身のために、お前のために、親友のために、友であり続けよう。


透。透。

俺の、最愛の人。

もう手には入らない人。
願わくば、俺のこの邪な思いがお前に伝わることのないように。




これは俺だけの密やかな告白。


【終】

・・・うちの弦一郎は生涯独身を貫きそうだなあ・・・と思うこの頃。(このままだとね!!!)
弦一郎落ちの話も書いてみたいなあ・・・^q^
透先輩と柳さんが、キスしてるのを見た。






触らぬ神に祟りなし







夕焼けに染まる部室の中、ドアの僅かな隙間から見えた一瞬のその光景。
忘れ物を取りに来た俺は、ドアの前で立ち尽くしてしまった。


何だか映画の1シーンを見ているようで、酷く現実味がなかった。

恋人なのだから、キスくらい当たり前なんだけどさ。
なんか柳さんってそういうことしそうにないじゃん?
透先輩もどちらかといえば大人しい性格だし・・・。
あの2人が手を繋いでいるところすら見たことないというのに。

要するに、誰も見てないところでいろいろやってるわけだ。


でも用意周到な柳さんが、いつ誰がやってくるか分からない部室でキスなんて。
不注意というか不用心というか…。
いや、柳さんのことだから敢えてそれを狙ってるのかもしれねえけど…。
まあ勘だけど。


『…こういうとこでキスするのやめてよ…。恥ずかしいでしょうが・・・』
『フ…たまには、な』


そんな小さな声が聞こえた。


(へえ…たまには、ね…)


柳さんはそのまま、また透先輩の額にキスをする。
どっからどう見てもラブラブにしかほかならない。

今までの、あの何でもなさそうな態度は何だったんだろう。


(興味なさそうな顔して…、柳さん結構手ぇ早いじゃん)

別に2人が部室でキスしてようが、セックスしてようが(いや、ヤるのは流石にやばいと思うけど)俺には関係ないので、出歯亀は大概にして勢いよくドアを開ける。


「…あっれー?先輩達まだ残ってたんスか?」


我ながら演技が上手いというか、白々しいというか…。

瞬間バッと柳さんから離れる透先輩。
ど、どうしたの赤也?と動揺を隠せない透先輩に対して、微動だにしない柳さん。

(性格出るッスね・・・)


「忘れ物ッスよ」

2人の目の前をそのまま通り過ぎ、自分のロッカーを漁る。
あったあった。

(持って帰らねえとカピカピになるからな…弁当箱…)


鞄に弁当箱をしまいこんで、お疲れ様です!と言って早々に出る。
ちょっと不自然かもしんねえけど、こんな微妙な空気の中に長々といたくない。

ドアが閉まる間際に、お、お疲れ!という透先輩の声が聞こえた。
まだ声がどもっている。

(…透先輩、相変わらず反応が初々しいッスねー・・・。柳さんには勿体無いぜ・・・)


そのまま止まらずに足を進める。
もう邪魔しないんで2人で仲良くやってくださいよ。


(…そうかそうか。あの柳さんがね・・・・・・)


いいこと知ってしまった。
ばらすつもりもないし、脅すつもりもないけど、これをネタに今度のテストのヤマくらいは教えて貰えるかもしれない。

なんてことを考えていると、


~~ッ~~ッ

「!」


メールを知らせるバイブ音。
パカリとケータイを開けば、


『覗きはいけないな』

「!!!」


そう柳さんからの言葉があった。


(見てたの・・・気付いてたんスか…!?)


思わず顔が青ざめる。
血の気がサーッと引いていくような感覚を覚えた。

どこから気づいてたんだろう。
まさか最初から・・・?
カマかけてるとも思えない。仁王先輩じゃあるまいし・・・。

俺が見てること知ってて透先輩にキスしたんだ。



何で?


まさか・・・・・・・ただの自慢?



・・・・・・・・・・・・



「・・・あの人も・・・なんつーか・・・性質悪いよな・・・」


透先輩もとんだ人の彼女になっちまったもんだよな・・・
もしかして真田副部長より大変なんじゃねえの?

テストのヤマとかそんなことはもうどうでもよくなってしまっていた。
どうせ言ったところで、覗いたことを言及されて逆に俺が不利になるに決まってる。
あの柳さんに口で勝てるとも思わない。


大体、柳さんが先程の行為自体をなんとも思ってないと・・・思う・・・。



いや、ただの考えすぎ?本当は照れてるとか?


・・・やっぱりカマかけてんのか?


???


あああああ!!考えてたら頭痛くなってきたぜ!!!



とりあえず、俺はケータイをポケットにしまい込み、もうこのことについて考えるのはやめた。
俺からこの話題はもう一切触れないことにしようと心に決めた。



・・・・・・触らぬ神に祟りなし って言うじゃん?




【終】


(´∀`)
この性格悪い柳をどうにかしてwwwwwwwww
どっちかっていうと、ゆっきーとか仁王のシチュエーションじゃね?wwwww

ゆっきーと仁王だと、メールの一言が「ドキドキした?」とか疑問系になると思うよ///^^///
これ、赤也じゃなくて覗いたのがブン太とかジャッカルとかでも同様っぽいよね!!


初々しくて、赤くなる柳も大好物だけど、こういうちょっと性格に問題ある柳も好きです。
フフフフフフ^^^^^^^^^
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