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2009、02、02
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ちょっと突然だったかもしれない。
ほら、伊織も驚いてる。

頬が少し赤くなってるのが見える。
なんだか緊張してるみたい。

でも・・・俺だって緊張してる。






隙間を埋めてみたくて





君との距離の隙間を埋めてみたくて、そっと、そっと手を握った。

俺の右手と伊織の左手。
じんわりと、じんわりと熱を持って重なった手は、いつしか物凄い熱さを発していた。


「あつい・・・ね」
「・・・うん」



俺達は、真夏のコンクリートに直接座っていた。
遠くでカモメが鳴いていて、遠くで汽笛が聞こえた。

海に行きたい。って、俺が伊織をデートに誘って、伊織は来てくれた。
水族館にすればよかったかな。

ここは熱いし、暑いし。
どうしようもない。

波風はそれなりに涼しいけれど。
それ以上に俺は、今体温が高いから、息をするので精一杯という感じだった。


伊織の左手に重ねた手を、ソロリと動かして、手の平を重ねるようにギュッと繋ぐ。
俺も、伊織も、汗まみれになって、ただ海の音を聞いていた。
会話は、ない。


遠くに見える海水客も、アイス売りのオジさんも、どこか俺達とは違う世界の住民みたいに、
いや、こちらが夢の世界みたいに、ふわふわしていた。

ダメだ、熱に浮かされてる。


「あつい・・・ね」
「うん・・・あつい・・・」


もうさっきからそれしか言ってなくて、もう延々とここに座ってるんだ。
飲みかけのペットボトルの中身は、すでに暖かい液体になっていると思われる。


目の前をアゲハ蝶がヒラヒラと舞った。
その蝶の動きが、ことさら速く見えるほど、俺達の周りはゆっくりゆっくり時が流れていた。


頭で、目玉焼きが焼けそう。
もう、焦げ付きそうなくらい、頭も、俺の心も湧いてて。

はあ。動悸が著しい。
俺このまま心臓破裂で死んじゃうかも。

このまま海に向かって走っていって、大声で叫びたい。そんな感じだった。


俺は今、右手で伊織を感じていて。
君も、左手で俺を感じてくれていたら、嬉しい。




「アイス・・・」
「え?」
「アイス食べない?精市・・・」

なんともなしに、ポツリと伊織が言った。


「うん。食べようか」


手は繋いだまま、俺達はそのまま下の砂浜に滑り降りて、アイス売りのオジさんに向かって歩き出した。
ポタリ、ポタリと繋がった手から汗が落ちる。
それでも手は離さない。

このまま溶けてしまいそう。
それこそ、炎天下のアイスクリームのように。


ああ、俺、今凄く青春してる。
こんなにも空が青くて、隣には君がいて。
君との距離を埋めるために、こうしてほら、手を繋いでいる。


顔が赤いのも、熱いのも、全部夏のせいにして。
アイスは俺が奢ってあげるよ。



【終】


もう、何が書きたかったやら。
甘いのかもよくわかりません。幸村マジック。
名前、伊織にしてみたものの、これはもう明らかに普通の短編小説ですね。ええ。
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