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2009、02、02
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カタン・・・


「?」
「透?」


部室で着替えている最中、何か物音がしたので窓の方を向いた。

「どうした?」
「何か、今物音しなかった?」
「え、そう?」


伊織は気づかなかったようだ。外に出て確認してみる。
右、異常なし。左も異常なし。
特に以上は見当たらない。


「・・・気のせいか・・・・・・」
「多分、鳥とかじゃない?早く部活行こ。時間ないし」
「うん・・・そうだね」


朝は一分一秒が惜しいので、私も伊織もその時は特に気にも留めず朝練に向かった。
だから、これが後々の事件の始まりなんて思いもしてなかった。





2人の事件簿 : 1





そんなことも忘れた、何日か後のある日。



「・・・・・・なんか、見られてる気がする・・・」




放課後の部活中。
私は、妙な視線を感じた。
今までも、視線を感じたことはあったが、今日は特にねちっこい感じだ。



「見られてるって?偵察の奴らじゃなくて?」
「わかんないけど・・・最近、特に妙な視線を感じない?物音とか」
「そう?うーん・・・そう言われると・・・そんな気もしなくも・・・ないような?」
「でしょ?」
「いや、私はわかんないけどさ」




立海は、「王者」なんて言われているだけあって、各校のテニス部が偵察に何人も来る。
それこそ、毎日のようにやってくるのにも、もう慣れた。
偵察が来ても、大して隠すこともしていない。むしろこっちは堂々としている。
隠すようなことしても無意味だし、知られたからといって簡単に勝敗が揺るぐような強さじゃないのだ。

今も、偵察と思しき人物がそこかしこに何人もいる。
メモをとっている者もいれば、ビデオカメラを回す者、写真を撮る者、様々だ。


「・・・あ、また視線・・・」

キョロキョロと辺りを見回してみるが、これといって気になるような人物はいない。
伊織も同じように見回しているが、気になったものはないようだった。



「・・・気のせいじゃない?」
「・・・うーん・・・・・・なんか引っかかる・・・」

「どうかしたのか?」


声のした方を見ると、弦一郎を筆頭にフットワークを終えたレギュラー陣がぞろぞろとこちらにやってきた。
すかさず、タオルとスポーツドリンクを手渡す。


「先程、辺りを見回していたようでしたが、何かあったのですか?」
「ん?いやあ、透がね、何か妙な視線を感じるんだって。私にはよくわかんなかったけど」
「妙な視線?」


伊織の言葉に、弦一郎が怪訝な顔をする。

「どういうことだ透?」
「うーん・・・何か、見られてるっていうか・・・なんていうか違和感があるんだよね・・・」
「偵察の奴らじゃないのか?」
「そんなの日常茶飯事だろぃ」

伊織と同じ言葉をジャッカルとブン太が紡ぐ。
偵察のものだと思うのが普通だ。



「伊織先輩は何も感じないんすか?」

赤也がタオルで額を拭きながら質問する。

「うーん。私はよくわかんないなあ」
「秋原が気づいていないだけで、お前も観察されているかもしれないぞ」
「観察って・・・柳じゃないんだから」
「・・・それは随分ないい草だな秋原」
「だってよく人間観察してるじゃん」


(・・・フォローできねえ・・・・・・)

伊織の言葉に、ゴホンと柳が咳払いをして更に続ける。


「・・・・・・論点を戻そう。実際笹本は視線を感じたのだろう?可能性はそう低くはない」
「その根拠は?」
「お前達2人のファンクラブがあるのは知っているか?」

・・・・・・・・・


「「ファンクラブ!!!???」」
「そんなのがあるんスか柳先輩!!」
「俺も初めて聞いたぜ・・・」
「私もです・・・」
「あるところにはあるんだな・・・」
「・・・たるんどる!」


(知らねえええええ!!!何だそれ!!!!!)


伊織も知らなかったらしく、私とハモった声で驚いた。
ファンクラブて!!!


「そんなのがあるの!?」
「私達マネージャーだよ!?」


レギュラー陣の何人かはやはり知らなかったらしく、私達と同じように目を丸くしている。
弦一郎を見ると、何だか今までに見たこともないくらい怪訝な顔をしていた。
眉間の皺が深い。


「『マネージャー』ということは、ここでは関係ない」
「要するに、お前さんらの個人的なファンということじゃ」
「まあ、2人のファンクラブが出来るのも何となくわかるけどね」
「そうじゃのう」

そう言う仁王と精市。
私達のファンクラブをつくる。っていう気持ちがわかんないよ・・・。


--- アイコンタクト ---
(伊織、知ってた・・・?)
(知らないよ!!っていうか・・・何でこの3人は知ってるんだよ!!)
(・・・まあ、こいつらだし・・・)
((こえええええ!!!!))


この3人に知らないことはないんじゃないかって時々思う。


「まあ、邪なことしとる輩は水面下で動いとるからの。知らなくて当然じゃ」
「(じゃあ何でお前は知ってるんだよ・・・)よ、邪?」
「おう。お前さんらの写真。・・・結構な高値で売れとるようじゃぞ?」


写真!!??


仁王の爆弾発言に、私と伊織を始め、皆一様に驚愕の表情をする。


「あ、それなら俺もチラッと小耳に聞いたことあるぜ?」
「ブン太も?」
「ああ、高値っていうのは知らねえけど。行事のときの写真って校内で張り出されるだろぃ?」


毎年何回かある行事の写真は、1枚1枚番号が振られ、校内で張り出される。
生徒であればどれでも好きな写真が注文できるシステムだ。
我が男子テニス部員の写真は一部の女子に大人気で、焼き増し必須ということは知っている。
実は私も密かにチェックするのが楽しみだったりする。

(だって、写真部ってやっぱり撮るの上手なんだもん)



「あれの伊織と透の写真ってさ、一部の男子の間でバカ売れなんだとよ」
「は?」
「それは私も聞いたことありますね。何でも1人ずつで写っているのは貴重だ・・・とか」
「そうそう。お前らいっつも一緒にいるからよ。個別に写ってる写真は珍しいから人気らしいぜ?」


ガムを膨らましながら、しれっとそんなことを言うブン太。
し、知らなかった・・・。マニアックな奴らもいるもんだ・・・。


「それはわかったが、高値で売れるというのはどういうことだ。写真の値段は一律のはずだろう?」

弦一郎がそう疑問を訴えた。
たしかにそうだ。写真の値段はみんな一様に同じ値段。
高値というのはどういうことなのだろう。


「一般には出回らない写真。ということじゃ」
「??」
「例えば・・・・こっそり撮った写真。とかの」

「こ、こっそりって・・・それ盗撮じゃないですか・・・」
「盗撮防止法案はどうした!!!」


伊織がそう叫ぶ。
確かに、肖像権も何もあったもんじゃない。
今まで何回も撮られていたというのだろうか・・・。何ということだ。
真面目で健全な弦一郎や柳生を見やると、仁王の一言一言にピクピクとこめかみが動くのが確認できた。


「盗撮防止法案とは、人の性的尊厳を守ることを目的としている。だから着衣した状態で盗撮されたとしても、法律では罰することはできない」

そう柳が言った。本当に君は歩く辞書ですね・・・。


「むぐぅ・・・」
「まあ、撮影なら俺達も何回もされてるじゃねえか」
「ッスよねー。フェンス越しに写メなんて日常茶飯事ッスよ」

ジャッカルと赤也が口を開く。
確かに。
レギュラーメンバーの写真は半黙認で盗撮されている。
いや、黙認されてるんだからこれは盗撮とは言わないのかもしれない。


「赤也達は撮られてるって認識してるじゃん!ファンの子の顔だって見えるし!」
「そうだよ。木陰から知らないヤツが隠し撮ってるんだよ?怖いじゃん!」
「それに、売買って・・・立派な犯罪だよ!」
「まあ・・・確かにそうッスね・・・」


ある意味ストーカー被害と言えなくもない。
こっそり撮るより、むしろ堂々と撮ってくれないだろうか。


「・・・盗撮された写真の中でも、特にカメラ目線の写真が高額で売買されるらしい」

そう柳がまた不穏なことを言った。


・・・・カメラ目線?



「撮らせた覚え、ないんですけど・・・」
「だよねえ・・・」
「写真部が来たときは今までに何枚も撮られていただろう?」
「・・・でもあれって、正式な写真じゃ・・・だってゆっきにも許可とってたし・・・」

そう伊織が精市に確認をする。
私だって、ちゃんと承認を得ているところを見た。
まさか、写真部が関わっているのだろうか・・・。


「確かに。あれは校内新聞用の写真に間違いないよ」
「ほら!」
「撮ったのは確かに写真部だ。しかし数ヶ月前に写真部の部室で盗難があったらしくてな」
「え、そうなの?」
「撮られたフィルムが一部だったことと、犯人の手がかりが皆無に等しかったため、公には知られていないようだ」
「・・・で、その撮られたフィルムっつうのが、お前さんらの写真ばかりだっていう話じゃ」




【続】
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