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柳と仁王が集めた話をまとめると、こうだ。
私達のファンクラブは、テニス部の親衛隊のような公になっているものではないが、数人の幹部がおり、ファン全体の統率をしていたという。
しかし、ここ最近になって派閥が生じ、それが分裂して個々に動き出したらしく、その分裂した派閥の1つが私達の情報、つまり写真を極秘裏に入手し売買しているらしいのだ。
「まあ、あえてそういうことをしている奴らを『過激派』と呼ぼうか」
わかりやすく紙に書きながら説明してくれた柳がそう言った。
(過激派か・・・何だか某テロ集団みたいだな・・・)
「過激派」なんていうと、なんだか自分達がとんでもない世界的事件に巻き込まれているような錯覚を覚えるが、これは学内における盗撮事件である。
といっても、私達にしてみればかなり大きな問題だけど。
「クラブは元々、『秋原派』と『笹本派』に分かれておっての、その2つの派閥の中の過激派のグループ同士がどうやら手を組んで写真を効率良く入手しとるようじゃ」
とんでもない行為をしてくれるものだ。本当に中学生か。
柳と仁王にもそれは言えることだが、他の人間にもそれが言えるとは思ってなかった。
手口や行動が立派に犯罪者のそれである。
この世界、侮れねえ・・・。
2人の事件簿 : 3
「・・・この最後に書いてある、(秘)って何だろうね?」
伊織がそう口を開く。
何故かこの最後だけ「要相談、個別連絡」なんて書いてある。
なんだか物々しい。
「さあのう・・・。よっぽどやばい写真なんかのう」
「その可能性は高いな」
「やめてくれえええええ!!!」
「考えたくないー・・・!!!」
伊織が手で両耳を押さえながら言う。
これ以上やばい写真なんてあってたまるか。
これ以上に一般に出回ってはいけない写真となると・・・
あとは・・・・・・
自然に頭が斜め下に傾く。
考えたくはないが、どうしてもセミヌード以上しか思いつかない・・・。
いわゆるR15ですね・・・わかります・・・。
「秋原、笹本。万が一に備えて着替えのときは十二分に注意しろ」
「あとはなるべく一人で行動しないことよ。一人で着替えとかは特にやめときんしゃい」
柳も仁王も私の意志を汲み取ったようにそう言った。
そうだよなあ・・・やっぱりそれしか思いつかないよねえ・・・。
「そんなことがあるとは考えたくはないだろうが、用心に越したことはないからな」
「・・・了解。まったく!私の透の着替えを覗き見しようなんて最低だな!許せん!」
「いやいやいや!!伊織もでしょ!!」
伊織は結構平気でヘソチラしたり、脱ぎ着したりするから気が置けない。
これは私が見張っていないと・・・
「そうだった・・・・・・・・って、あ」
急に伊織が神妙な声をあげた。
「・・・そういえば・・・前に朝連のとき・・・透何か言ってなかった?」
「朝連・・・?・・・・・・・・・・あ!!!」
「何か気になることでもあるのか?」
私は、大分前に妙な音を聞いたことを思い出した。
「今まで忘れてたんだけど、そういえば朝連のときに変な物音がした気がするんだよね・・・」
「・・・・・・詳しく聞かせてくれないか?」
「うん。3週間前・・・かな?朝の着替えのときに、カタンッって物音がしたの」
柳はメモをとっている。
「何故そのときに言わなかったんだ?」
「いや・・・そのときは気のせいだと思って・・・」
「朝連で時間なかったしね」
もしかしたら世に言う「覗き」ってやつだったかもしれない。
それを想像したら急に鳥肌が立ってきた。
マネージャーの部室は、男子テニス部の部室の近くにあるものの、元々は倉庫に近い形で使っていた。
だから若干隅にあるし、部分的に死角がある。
しかし、朝で早いとはいえ、いつ誰に見られるかわからない状態だ。
だからそんな時に覗きというのは相当の勇者である。
「大体、私の下着姿なんてそんなに見応えないと思うんだけど・・・」
自分と伊織の体を見比べてみる。
伊織の方が出てるとこは出てるし、引っ込んでるところは引っ込んでるし、要するにナイスバディだ。
私が覗きの犯人だったら是非とも伊織の姿は拝見したいところだ。
「えー?透だって結構見応えあると思うよ。お尻から脚にかけてのラインとか?」
「どこ見てんだ!・・・いや、そんなこと言ったら伊織だって最近また胸の発育が著しいみたいですけど?」
「いや、透も最近・・・「とにかく2人とも気をつけてくれ」
論点がずれたので、心なしか呆れたような気恥ずかしいような顔をした柳が話を遮った。
「何か変わったことがあったら何でもいいから誰かに言いんしゃい」
「「・・・はーい」」
キーンコーン カーンコーン・・・
「あ、予鈴」
「もうそんな時間か」
随分話し込んでいたらしい。
チラホラ見えた他の生徒の姿も、もはや見えない。
「では、今日の部活後にでも更衣室を見に行こう」
柳がそう言った。
「え?でも音がしたのは随分前だし・・・本当に気のせいかもしれないよ?」
「念のためじゃ。何かまだ証拠があるやもしれん」
「用心に越したことない。と言っただろう?」
「・・・そう、だね。うん」
「じゃあ、部活後に」
先程の特別教室の件を思い出す。
もしかしたら同じように手がかりを残しているかもしれない。
私は期待と、また変なものが見つかるんじゃないかという不安感で午後の授業がまったく手につかなかった。
【続】